宇宙戦艦ヤマト2199 第7章 「そして艦は行く」感想Part1 [宇宙戦艦ヤマト2199]

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宇宙戦艦ヤマト2199 最終章「そして艦は行く」感想その1です。

いつもどおり激しくネタバレですので、未見の方はご遠慮いただいたほうがいいかも(^^;
23話 「たった一人の戦争」
ガミラス本星軌道上の第二サレザー星系に入ったヤマトを襲った光条はやはり波動砲だった。
さすがに惑星間の距離が幸いしたのか、ヤマトは直撃せず。
ヤマトの撃破を傍らにいるユリーシャ(雪)に告げるデスラー。それを聞き一瞬呆然としますが激しい怒りを込めた目でデスラーをにらみつける雪が怖い。
ここで取り乱さないところに彼女の芯の強さが現れてますね。
辛くも消滅を免れたヤマトは波動砲に補足されないように亜高速まで加速しながらガミラス本星へ突っ込みます。もう定番の「死中に活」な沖田戦法であります。

待ち受けるのはギムレー率いる親衛艦隊。
前面に配置された青いポルメリアから艦載機がヤマトに襲い掛かりますが、だめだろそんな運用しちゃ。
なんのための空母だw
案の定ヤマト航空隊に叩かれてしまい、セレステラにも無能と吐き捨てますが、どうも故意にまずい戦い方をしているようでもあります。
一方バレラスへ進攻するヤマトを阻止しようとする親衛隊ガミラス艦との戦闘がスピーディーで熱い。
海戦で言うところの同航路の状態で次々とガミラス艦を屠って行き、総統府の手前で前方に回りこんだ艦を波動防壁を展開しつつ艦首で真っ二つにするアクションにはしびれました。親衛艦隊にも気概のある艦長は居たんだねぇ。
包囲を突破したヤマトはそのまま総統府に突き刺さります。沖田としてはデスラーを拘束することでガミラスと停戦し、イスカンダルへ無事に行く条件を引き出す算段だったのでしょう。
(現実的にはかなり勝算の薄い案だと思ってしまいますが)
しかしヤマトが陸戦隊を編成して総統府に乗り込もうとする中、総統府に隠されていたデスラーの座乗艦デウスーラⅡが雪とノラン君も乗せたまま総統府から飛び立ってしまいます。
この少し前、ノランから脱出を提案された雪が、着ていたイスカンダルのドレスの裾をビリリと短くしちゃうという、もうそれはそれは手垢のついた演出のシーンがあるのですが、「そう言ってくれると思った!」という雪を見て、ノラン君はあらためて守られていたのは自分だったということを知ったのではないでしょうか。

デスラーは第二バレラスの一部を質量兵器としてバレラスに落下させ首都もろともヤマトを斃そうとします。
このあたりが劇中ではどうも説明不足でうっかりするとデスラーがただの狂人に見えちゃうので後で自分なりに考えてみます。
沖田は落ちてくる第二バレラスを波動砲で破壊することを決断し、古代は自分の成す事を自覚し、雪の救出を申し出ます。ここでの古代の表情にやっと主人公らしいかっこよさを見ることが出来ました。
またこのときの艦橋にいる面々の雰囲気が凄く良い。2199になって増やしたキャラクターを濃淡はあるにせよちゃんと描いてきた効果が出ています。特に南部が頼もしい、ユリーシャは可愛い。
ユリーシャと共に古代はデウスーラⅡを追います。コスモゼロ、復座でよかった(^^)
なんですが、首尾よく救出した後はど~するつもりだ。
コスモゼロにガミラスの防空戦闘機が群がってきますがこの危機を救うのが赤いツヴァルケを駆ったメルダ。
さらに山本、加藤も駆けつけ、「行け古代、ここは任せてお前の出来ることをしろ!」
ゼロを中心とした4機編隊の絵と熱い台詞回しが往年のヒーローロボットアニメを彷彿とさせます。クサイなどと言わずここは素直に楽しみましょう^^
首都崩壊の危機はヤマトの波動砲で回避されます。(南部、撃ててよかったな!)
1974では一発でガミラス本星を壊滅(1つの星が死んだと表現されてました)させてしまった波動砲が2199ではガミラスの人々を救うのです。
間違った指導者を戴いた国民の悲劇、を描いた1974でのガミラス本土決戦も胸に響く結末ではありましたが、ガミラス側のキャラクターを掘り下げることによって彼らを「解かり合える存在」として描いてきた2199にとって、筋の通った決着だったと思います。
ついでにいうと1974でガミラス本星を滅ぼした後に古代と雪が口にした後悔は2199では地球側の先制攻撃という事実が明らかになったことによってなされているとも思います(ちと弱いか(^^;)
コロニー落としの失敗にめげず、今度はデスラー砲でのバレラス-ヤマトの破壊を敢行しようとするデスラー。
それを阻止すべく、異星のシステムをすんなりハッキングして波動コアを暴走させてしまうスーパーハッカーの森雪すげえ。^^;
いよいよというとき突然ノラン君は「貴女をここで止めれば俺も一等ガミラス臣民だ。」と雪を拘束し、外へ放り出します。
裏切り!?なんてはずはなく、彼は波動コアの暴走による死から雪を命を賭して守ったのでした。
「あのひとの本当の名を聞いてなかったな・・・」という最後の言葉を残して。(あ、ちょっと泣けてきた。)
暴走する波動コアを抱えたままデスラー砲を撃ってしまい、次々と誘爆を起こして崩壊する第Ⅱバレラス。
親衛艦隊も巻き添えを食って壊滅します。
やっとのことでたどり着いた古代とユリーシャはその状況に愕然としますが、不思議な力に導かれるように古代が雪を発見するのでした。
お互いの存在を確かめ合う古代と雪、宇宙空間に浮かび約束の地イスカンダルを見つめる2人のラストシーンは
劇場で見てて良かったと思わせる美しいシーンでした。

-デスラーの孤独-
23話のタイトル「たった一人の戦争」のたった一人とはデスラーのことと感じました。
デスラーの覇業の出発点はスターシアの存在。ビーメラ星で垣間見えたイスカンダルの使命、それは紛争によって滅び行く知的生命体の救済でした。
デスラーは自分のスターシアへの愛を成就させるためには彼女をそのくびきから開放しなければならないと考えたのでしょう。
そのため選んだ手段が軍事独裁国家ガミラスの武力統一による宇宙平和の実現。しかし、それは一部の元々虐げられていた者たち(セレステラとかね)には理想と受け取られた部分もありましたが、直接的に侵略の被害者(地球ね)のみならず内部にも権力の腐敗や体制の維持のために起る不幸な出来事(殲滅です)が付きまとい、とてもじゃないがスターシアが受け入れられるものにはなりませんでした。
回想でデスラーがスターシャに差し伸べた手を彼女が決してとらなかったことに最初からの拒否が表れていますね。
第22話「向かうべき星」でセレステラがデスラーへの「忠誠」を口にした際、デスラーは自嘲気味にその言葉を繰り返しましたが、あの時は彼のスターシアに対する忠誠がもはや届かないものであると知っていたのでしょう。(もしかすると守との仲にも気付いていたのかもしれない)
だから「鳴かぬなら・・・」ではありませんが、デスラーはヤマトのガミラスへの進攻を契機として首都バレラスと自分以外の政権中枢を灰燼に帰した後、無理やりにイスカンダルへの遷都と「大統合」(これにはデスラーとスターシアの関係も含まれます)を成すつもりだった。
孤独だねぇデスラー。1974でも一番ワルい奴。だったわけですが、旧作での彼は老い先のないガミラス星から地球へ移住するという国家国民の「希望」を背負ってヤマトと対峙していました。それゆえに、ガミラス本土決戦で行った天井都市をミサイルにしてヤマトの頭上に降らせるという狂気の行動もその切羽詰った背景では多少の情状酌量も出来ました。
しかし2199での彼の行動原理となっている独りよがりの「愛」は、いくら「原罪を背負う」覚悟があったってだれも納得しません。そもそもデスラーは臣民を愛してなどはいなかったのだから。

24話「遥かなる約束の地」
雪も戻ってデスラーも去り、いよいよヤマトは約束の地、イスカンダルへ。
真田、古代、新見、雪がユリーシャと共にスターシアの元へ赴きますが、スターシャは波動エンジンの兵器への転用を理由にコスモリバースシステムの引渡しを保留することを告げます。
ここで古代が抗議しようとしますが真田が諌めます。兵器転用のまさに当事者である彼だからこそ、その罪に悩み、ヤマトが波動砲に関して行ってきた行動に関しても自覚的で、沖田と同様に言葉ではなくその行動を見てほしいという気持ちだったのでしょう。
スターシアの意外な態度に動揺するヤマト艦内ですが、スターシアの決断を待つ間にまさかの海水浴。
ヤマトで水着回とは・・・第7章は製作が間に合わず、25話が10分間短縮されているそうです。
ヤマトで水着なんてケシカランヽ(`Д´#)ノ なんてことはなく歓迎さえする私ですが、
さすがに後回しにするならまずこっちだろと。

停泊するヤマトの艦橋で「フネはやっぱり水の上がいいよなぁ」と会話する古代と島のシーンがありますが、
1974の23話で敵の本拠地ガミラスの海に着水しているシーンの回収ですね。
よく聞く2199批判に「ヤマト側に緊張感や悲壮感が感じられん」というのがありますが、そういう人はどれだけ1974を確認して言ってるんでしょうかね。
古代が脳筋なのもあって、1974にこそそういう緊張感の足りないどころではないシーンなんていくらでもあるんだけど。
そんな中、お花畑でのユリーシャと雪の会話。(桑島さんの独演、上手い)
「コスモリバースには星の思いが託されたエレメントが必要、だからあなたたちに来てもらう必要があった。」だそう。
一方古代はスターシアと共にイスカンダル人たちが眠る墓地を訪れます。そこには「古代 守」の名が刻まれた墓碑が。
古代守は冥王星海戦の後、捕虜(生体サンプルって呼ばれてましたが)としてガミラスへ運ばれる途中、事故でイスカンダルへ墜落し、一命を取りとめはしたものの、余命は長くなく、この地で息を引き取ったとのこと。
スターシャから手渡され、ヤマトのクルー達にも公開された守の最後のメッセージには地球へ帰りたい思いと弟、進への想いが切々と語られていました。
これを知ってやっと泣けるようになった新見さんが痛々しい。

波動砲を兵器に転用してしまった地球を救うべきか苦悩するスターシャ。ヤマトがその旅を通じて、善き力の使い方と生き抜く意思を示したことはわかってはいるのですが、
彼女にはもう一つコスモリバースを渡すことを逡巡する理由があったのです。
それは守の記憶、魂とも呼べるものがコスモリバースの中核となるものであり、それを渡してしまうことは守との本当の別れを意味するものだったのです。
ここで、スターシャが守の魂に呼びかけるシーンがなかなか生々しい。なんか「あの人も来ていた」とか言ってるし。新見さんのことだよね。
しかし自分への守への未練と地球を救うコスモリバースを渡すことを天秤にかけちゃうって、見方によってはデスラーと同じじゃないのかと。悲しいね、女は。(いや男もですけど。)
結局、スターシアはヤマトを訪れ、コスモリバースシステムを与えること、それにはヤマトそのものを改造してコスモリバースシステムとするのだということを告げます。
また、かつてイスカンダルもまた波動砲による暴力で星々を支配した過ちがあることを打ち明け、地球人の未来に期待するとも。
そして旅立ちの日、イスカンダルから飛び立つヤマトの波動砲口には封印が。
この封印、パンフレットに画像つきで説明があるのですが、日本語が「時限波動爆縮放射器」となっていて、間違っています。(正しくは次元)
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パンフレットの誤植か、劇中で作業員が間違えて書いた設定なのか、はたまた「条約で封印したのは時限(以下略)である。新生国連宇宙軍艦隊が装備しているのは次元(以下略)だから条約違反には当たらない(ドヤ)」
という続編のための仕掛けでしょうかw だとしたら首謀者は大砲屋 南部に違いない。

去り行くヤマトを見上げ「さようなら、守」とつぶやくスターシアの手がおなかに・・・(゜Д゜)!
そうか、そういうことか。独り身の寂しさに耐えかねて瀕死の地球人を手篭めにするという、流行の肉食女子守は去り、忘れ形見を残していったと・・・

7章前半、23話はガミラス本土決戦、24話はイスカンダル到着と古代守のエピソードということで、ストーリー全体の中で占める位置は1974と2199と同じなのですが、展開を比べてみると見事に対になってます。
23話:(1974)波動砲でガミラス本星を壊滅 < > (2199)波動砲でガミラスの人々を救う
24話:(1974)古代守生きている ~ イスカンダルに残る < > 古代守死んでた ~ 地球へ帰る
それでありながら語られているテーマは共通していて、ここにも総監督はじめスタッフの、ヤマトの大事なところは残して新しい物語を作ろう、という意思が感じられました。

では後半、感動のフィナーレ(死語)へ続きます^^
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ドカ山

相変わらずの切れのある詳細解説、有り難うございます。
演出面にも切り込んだ解説は『なるほど、あのシーンはこういう意図だったのか・・』とかあらためて気がつく事も多くて僕も観賞後の印象を自分なりにまとめるのに凄く役に立ってますよw
波動砲の封印って予想もしませんでした。続編もうわさされてますが
色々と想像をめぐらすのも楽しいですね
by ドカ山 (2013-08-30 21:27) 

エインセル

第七章、前半の感想、ご苦労様です。
23話、24話、どういう風に再構成されるのか、期待半分、不安半分な心境でしたが、旧作に存在したテーマを踏まえた上で、上手く再構築されてましたね。

23話は、第一作では、ガミラス本星の戦いの後に
「我々は、戦うべきではなかった。愛し合うべきだった」
と、古代の台詞のみだったのを、実際の行動で示した、という所が、観ていて、しびれましたね。
また、「愛し合う」=「理解しあう」ととれば、古代のコスモゼロにユリーシャが乗り込んだり、それを支援する航空隊の中に、山本とメルダがいる、という構成も上手いなあと。
あと、救出された雪が艦橋に戻ってコンソールを操作した際、表示される「オカエリナサイ」の「イ」だけクルッと回ったのは、トップをねらえ!のオマージュですね。

デスラーの思い、個人的には、兄弟星でありながら、先に文明が発達したイスカンダルに対する羨望と劣等感が入り混じった、複雑な感情から、それを克服する為に、ガミラスの版図を拡大、最終的には、統合の名の下にイスカンダルも支配する、というような感じかな?と予想してたんですが、思ってたより、純真な動機でしたね。
劇中の回想よりももっと昔、スターシャとデスラーが、それぞれの星の統治者になる前に会っていて、その際「自分がガミラスの統治者になった時は、君の使命に力を貸す」みたいな誓いをしてたりしたのかな?とか私的妄想してます。
その動機には、悪しき思惑など、微塵も無かった筈なのに、何故こうなってしまったのか・・・・・

24話は、2199では、もう出てこないと思っていた古代守の登場には驚いたものの、ヤマトの到着時には亡くなっており、その意思と記憶が、コスモリバースシステムの中核になる、という展開は、その決断をするに至ったスターシャの苦悩や逡巡(この辺り、23話の自分の思いを実現する為に、国と国民を犠牲にしようとしたデスラーと対になってますね)と併せ第一作のイスカンダルにいた古代守の不自然感を廃して上手く、まとめたなあ、と思います。
古代守と、ヤマトのクルーが実際に会うのを見られなかったのは残念でしたが、そうなった時に、スターシャと新見さん、どうなってたのか・・・・考えると、怖くなってしまいました(苦笑)
by エインセル (2013-08-31 15:07) 

ちょうぎ

ドカ山さん、ありがとうございます。
2199色々と説明不足だったり、ほったらかしの伏線もあるんですが、そこを想像できるのも「良い所」と解釈するようにしています^^
by ちょうぎ (2013-08-31 17:21) 

ちょうぎ

エインセルさん、こんにちは^^
スターシャも猊下って呼ばれる立場なんだから、上手くデスラーを導いてやればよかったのに。一人の男も救えないではあまねく知的生命体は救えないぞ、と。
コスモリバースの中心が守だということも新見が居なければスターシャは伝えていたのかも知れませんね。
デスラーも今作で割をくって矮小化されちゃったキャラクターですが、スターシャもデスラーとの通信の様子といいちょっと器が小さいなと感じますね(^^;

by ちょうぎ (2013-08-31 17:29) 

NO NAME

そういう人はどれだけ1974を確認して言ってるんでしょうかね、
と述べておられるのでひっかかった箇所を指摘します
1974では一発でガミラス本星を壊滅(1つの星が死んだと表現されてました)させてしまった波動砲が2199ではガミラスの人々を救うのです。と記されていますが
天井都市のミサイルによって自らガミラスは崩壊して行ったんですよ
波動砲は強酸性の海を変えるために撃った描写、演出になっております。

by NO NAME (2014-09-05 17:59) 

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